抄録
琵琶湖湖底堆積物コアを用いて過去約28万年間の珪藻殻数(valves/g)および珪藻化石群集を,平均1,500年間隔で分析した.珪藻化石群集の種構成には大きな層序的変動が認められ,その特徴をもとに7つの珪藻帯(Zone 1〜7)に区分した.この珪藻帯区分は,先行研究の結果と整合的であり,琵琶湖全域に共通する珪藻群集の変遷が確認できた.コア深度99.51〜65.01mのコア下部(Zone 2)の時代では殻数が少ない一方で,付着性珪藻の比率が高いことから愛知川デルタが前進した影響が推定された.コア上部(Zone 3〜7)では浮遊性珪藻が優占し,その殻数の変動には,中国の石筍に記録された酸素同位体比変動と同調性が認められる.珪藻殻数は珪藻生産性の指標であるが,その変動は夏季の東アジアモンスーンの強度変動に支配された降水量変動のプロキシであると考えられる.