2015 年 54 巻 1 号 p. 11-20
静岡県西部に位置する太田川低地で,弥生時代中期後半から後期頃(100BC〜300AD)に相対的海水準の上昇があったことが明らかになった.相対的海水準の上昇は,河川改修工事の法面に現れた淡水成の泥炭層などを覆う“海成シルト層”によって認定された.この海成シルト層は最大で層厚約25cmで,干潟周辺に棲む貝類や珪藻の化石を含む.その上位には河川や湿地性のシルト層などが重なる.相対的海水準の上昇が起きた時期は,合計12個の14C年代測定値と土器片を用いた編年によって推定された.太田川低地で見られた相対的海水準上昇の原因は,1,000年スケールのローカルな地殻変動(沈降)と考えられる.