第四紀研究
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「更新世・完新世の資源環境と人類」特集号
更新世末の九州地方における先史狩猟採集民の居住形態
森先 一貴
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2015 年 54 巻 5 号 p. 257-270

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抄録

九州地方では,型式学的研究とともに,放射性炭素年代とテフラ層序に基づいた旧石器時代から縄文時代草創期の編年研究が進展をみる一方,居住形態研究はいまだ発展途上である.本論は道具組織や技術構造と居住形態の相関関係を論じた先行研究を参照し,石器器種多様度・技術多様性・利用石材・遺構組成の分析を通じて居住形態の地域差と通時的変化を論じた.その結果,晩氷期直前には南北九州とも,狩猟活動を主たる生業とした移動生活を送っていたと考えられ,それが北部九州において移動性(移動距離)が高く,南部九州において移動性(移動距離)が相対的に低い居住形態に支えられていたことがわかった.晩氷期温暖期に入っても,北部九州での居住形態は大きく変化しないが,南部九州では定着的居住が急速に進行し,狩猟以外の生業活動へのコストを大幅に引き上げる変化が起こった.これは晩氷期気候変動を背景とする環境変化と人口密度の上昇が背景になっていたと推測できる.

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© 2015 日本第四紀学会
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