2016 年 56 巻 2 号 p. 37-50
平成27年9月関東・東北豪雨により鬼怒川中流域の常総市上三坂地区で生じた人工堤防の決壊による堆積物について,トレンチ掘削や粒度分析を行い,その堆積学的特徴を明らかにした.破堤堆積物は全体的に細粒砂〜中粒砂を主体とし,下位から順に,上方粗粒化を示す細粒砂層(ユニットA),上方細粒化を示す細粒砂〜中粒砂層(ユニットB),低角斜交層理や平行葉理の発達する細粒〜中粒砂層(ユニットC)に細分される.各堆積ユニットは,鬼怒川の越水,破堤,さらに河川水が氾濫原に流入した後,氾濫が収束するという一連の堆積プロセスを反映していると推定される.ユニットAは越水による氾濫堆積の特徴としてよく知られているものである.今回の破堤堆積物では,その上に上方細粒化するユニットBが重なることが特徴である.