第四紀研究
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56 巻, 2 号
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2016年日本第四紀学会学術賞受賞記念論文
  • 林 成多
    2016 年 56 巻 2 号 p. 25-35
    発行日: 2016/04/01
    公開日: 2017/05/12
    ジャーナル フリー

    日本列島の昆虫相の変遷を解明するため,鮮新世以降の昆虫化石の調査を各地で行った.その結果,鮮新世〜前期更新世には絶滅種と現生種の昆虫が共存していたことが判明した.絶滅種のほとんどは,前期更新世末〜中期更新世初頭には絶滅したと考えられる.特に化石記録の豊富なネクイハムシ亜科(コウチュウ目ハムシ科)について研究を行った結果,現生種の化石記録には,鮮新世〜前期更新世まで遡る「古い現生種」と中期更新世に出現する「新しい現生種」の存在が明らかになった.絶滅種の記録も含め,ネクイハムシ相の変遷を時代ごとに区分した.現在のネクイハムシ相がほぼ完成した時期は中期更新世以降である.また,現生種の化石記録を基に,分子系統樹の時間軸を設定し,分化年代を推定した.

論説
  • 佐藤 善輝, 宮地 良典, 卜部 厚志, 小松原 純子, 納谷 友規
    2016 年 56 巻 2 号 p. 37-50
    発行日: 2016/04/01
    公開日: 2017/05/12
    ジャーナル フリー

    平成27年9月関東・東北豪雨により鬼怒川中流域の常総市上三坂地区で生じた人工堤防の決壊による堆積物について,トレンチ掘削や粒度分析を行い,その堆積学的特徴を明らかにした.破堤堆積物は全体的に細粒砂〜中粒砂を主体とし,下位から順に,上方粗粒化を示す細粒砂層(ユニットA),上方細粒化を示す細粒砂〜中粒砂層(ユニットB),低角斜交層理や平行葉理の発達する細粒〜中粒砂層(ユニットC)に細分される.各堆積ユニットは,鬼怒川の越水,破堤,さらに河川水が氾濫原に流入した後,氾濫が収束するという一連の堆積プロセスを反映していると推定される.ユニットAは越水による氾濫堆積の特徴としてよく知られているものである.今回の破堤堆積物では,その上に上方細粒化するユニットBが重なることが特徴である.

短報
  • チューンピー ティラポン, 松浦 旅人, 西川 治, 内田 隆, 高島 勲
    2016 年 56 巻 2 号 p. 51-58
    発行日: 2016/04/01
    公開日: 2017/05/12
    ジャーナル フリー

    青森県上北平野に分布する海成段丘上の中期更新世の未固結White Pumiceテフラ(WP)について,Multiple aliquot regeneration法による熱ルミネッセンス年代を求めた.試料は,甲地(かっち)及び七百(しちひゃく)の露頭から各6及び10個を採取し,溶脱による化学組成変化を評価した.これら16試料について,U,Th,Kという放射性核種を測定した.TL年代測定は,5試料について実施した.これらのうち3試料は187±29ka,230±23ka,229±38ka(加重平均:216±15ka)であり,深海底堆積物コアの海洋酸素同位体比層序から求められたWPの年代(MIS 7b;205-210ka)とほぼ一致した.残りの2試料の年代は165±28ka及び265±33kaであり,既知年代とは一致しない.前3試料はすべての分析データをプロットしたU-K2O,Th-K2Oダイアグラム上の集中域にあるのに対し,後者の2試料は集中域から離れた値を持っている.未固結試料であるテフラのTL年代測定では,化学分析による選別で適正な年間線量を持ったものが測定対象となると予想される.

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