2021 年 60 巻 2 号 p. 27-41
紀伊山地十津川において125ka以前に離水したと考えられている環流旧河谷の流路堆積物に長石の光ルミネッセンス(OSL)年代測定を適用し,堆積年代の推定を試みた.線量応答曲線の定量限界値を飽和線量(∝飽和年代)とみなし,等価線量(∝OSL年代)の飽和率を求めたところ,測定試料の大半がOSL年代の飽和を示した.加えて,不完全ブリーチに起因するOSL年代の過大評価が疑われたため,堆積年代の決定はできなかった.一方で,OSL年代が飽和に達していない測定試料の飽和年代から,堆積年代は少なくとも280kaより若いと考えられた.流路堆積物の堆積年代を280~125kaとして算出した下刻速度は0.39~0.87mm/yrとなり,紀伊山地の削剥速度からみて矛盾のない値であった.このことは,不完全ブリーチの影響によって堆積年代の決定が困難な場合であっても,OSL年代測定により堆積年代の最大値を制約できる可能性があることを示す.