2022 年 61 巻 4 号 p. 143-155
2021年7月3日に静岡県熱海市伊豆山地区の逢初川沿いで土石流が発生し,大量の土砂が相模湾まで流下した.その後の調査で,逢初川の源頭部にあった盛土のうちの約55,500 m3が崩落し,流下したことが分かった.この源頭部の崩壊していない盛土の黒色の土砂から3個の軟質泥岩礫を採取した.これらは塊状で,貝類などの大型化石は含まない.色調は灰色から灰白色を呈する.含泥率は66.9~97.7%である.最重量の試料1は730 gである.火山ガラスを多く含む.花粉,放散虫,海生珪藻,底生有孔虫の分析から,軟質泥岩礫の採取地は鮮新世最末期から前期更新世に沖合で堆積した海成層であることが判明した.