本論では日本海中部の若狭湾沖で採取された海底堆積物コアに挟まるテフラの層相と記載岩石学的性質について記載した.また,若狭湾沖海底堆積物コアに挟まるテフラと日本海の海底堆積物コアに挟まる後期更新世から完新世の模式テフラについて,火山ガラス片の主成分元素組成をSEM-EDS分析により測定した.その結果,若狭湾沖海底堆積物コアには,上位から順に,鬼界アカホヤ (K-Ah) テフラ,TRG1テフラ,TRG2テフラ,大山草谷原軽石層 (KsP),若狭1 (Wks1;新称) テフラ,姶良Tn (AT) テフラ,姶良-大隅降下軽石堆積物 (A-Os),鬱陵大和 (U-Ym) テフラ,若狭2 (Wks2;新称) テフラ,山陰1 (SAN1) テフラ,阿蘇4 (Aso-4) テフラ,鬼界葛原 (K-Tz) テフラが確認された.本論で構築した若狭湾沖海底堆積物コアのテフラ層序は,他の海底堆積物コアや湖成堆積物コアと対比する際の重要な層序学的資料となる.
2021年7月3日に静岡県熱海市伊豆山地区の逢初川沿いで土石流が発生し,大量の土砂が相模湾まで流下した.その後の調査で,逢初川の源頭部にあった盛土のうちの約55,500 m3が崩落し,流下したことが分かった.この源頭部の崩壊していない盛土の黒色の土砂から3個の軟質泥岩礫を採取した.これらは塊状で,貝類などの大型化石は含まない.色調は灰色から灰白色を呈する.含泥率は66.9~97.7%である.最重量の試料1は730 gである.火山ガラスを多く含む.花粉,放散虫,海生珪藻,底生有孔虫の分析から,軟質泥岩礫の採取地は鮮新世最末期から前期更新世に沖合で堆積した海成層であることが判明した.