第四紀研究
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総説
第四紀の東アジアにおけるタケネズミ類の分布
河村 愛河村 善也
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2023 年 62 巻 3 号 p. 121-132

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抄録

タケネズミ類は穴居性の大型の齧歯目のグループで,東アジアでは現生のものと第四紀の化石として知られるものは,このグループのタケネズミ属にほぼ限定される.本論文では,東アジアでの更新世のタケネズミ属化石の分布を,データソースを示したうえで,分布図にまとめた.分布図から,前期更新世の産地のほとんどは中国南部にあり,前期更新世にはこの属が中国南部に広く分布していたこと,中・後期更新世の化石産地はそれよりはるかに多く,やはりほとんどが中国南部に分布し,この属がその時期にトウヨウゾウとともに中国南部の動物群の主要要素であったことがわかる.一方,中国北部には化石産地はほとんどなく,中国東北部や朝鮮半島,本州・四国・九州,琉球列島,台湾には化石産地はない.中期更新世の日本には,トウヨウゾウが中国南部から移入した時期があったが,それに伴って移入した種類は少ない.移入しなかったものの代表がタケネズミ属である.

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© 2023 日本第四紀学会
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