第四紀研究
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62 巻, 3 号
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2022年日本第四紀学会賞受賞記念論文
  • 池原 研
    2023 年 62 巻 3 号 p. 73-87
    発行日: 2023/08/01
    公開日: 2023/08/17
    [早期公開] 公開日: 2023/08/01
    ジャーナル フリー

    マグニチュード9を超える巨大地震はどの程度の頻度で発生し,その発生パターンの特徴はどのようであるのか.短い期間の観測記録や歴史史料だけからこれを知るのは困難であり,地質記録の解析が必要となる.海底堆積物中の地震性イベント堆積物を用いた地震履歴の検討においては,地震の度にイベント堆積物が形成されることが望ましい.地震に誘発された海底地すべりは地震性イベント堆積物の形成に大きく貢献するが,海底地形規模の一つの海底地すべりの発生間隔は地震性イベント堆積物の堆積間隔よりも長く,地震性イベント堆積物の形成に海底地すべり以外のプロセスがあることを想像させる.地震動により表層数~数十cmの堆積物が再懸濁・再移動するプロセスは,地震の度にイベント堆積物を形成するプロセスとして注目されている.ここでは,表層堆積物再懸濁と呼ばれるこのプロセスを紹介するとともに,現在進められている超深海やより長期間の地震記録の解読の研究を含めて,海底堆積物中のイベント堆積物を用いた地震履歴研究の今後を議論する.

論説
  • 近藤 洋一, 間島 信男, 野尻湖哺乳類グループ
    2023 年 62 巻 3 号 p. 89-104
    発行日: 2023/08/01
    公開日: 2023/08/17
    [早期公開] 公開日: 2023/08/01
    ジャーナル フリー

    野尻湖からナウマンゾウをはじめ多くの脊椎動物化石が発見されている.1962年の第1次野尻湖発掘から2018年の第22次発掘までに15,989点の資料が野尻湖発掘調査団によって得られた.本論では第1次発掘から第22次発掘の資料をもとに,タクサ別層準別化石数の特徴を明らかにした.臼歯化石については,野尻湖層立が鼻砂部層T4~T6ユニット(43.8~42.6 ka)が単位時間単位体積当たりの化石数が最も多いことが分かった.また,臼歯化石からナウマンゾウの層準別の最小個体数をもとめ,その変遷を明らかにした.その結果,年齢構成の特徴から,野尻湖におけるナウマンゾウが選択的な死による集団である可能性があることが判明した.

  • 西川 治, 嶋田 智恵子
    2023 年 62 巻 3 号 p. 105-119
    発行日: 2023/08/01
    公開日: 2023/08/17
    [早期公開] 公開日: 2023/06/22
    ジャーナル フリー

    男鹿半島北岸,五里合低地で掘削された6本の沖積層ボーリングコアの層相解析,放射性炭素年代測定,珪藻化石分析および花粉化石分析に基づいて,堆積盆の基盤を構成する地層,堆積盆の埋積過程と完新世の環境変遷を検討した.五里合低地では,約15~20 mの厚さの沖積層が,最終氷期の堆積面が削剥されて形成された幅広い堆積盆を埋積している.堆積盆の基盤は,上部更新統潟西層の砂層および約40,000年前の湿地堆積物からなる箱井層最下部である.五里合低地の環境は,後氷期の温暖化による海進の影響よって,扇状地から約10,000年前には氾濫原となり,8,500年前には湾となった.縄文海進高頂期には,汽水あるいは海水の影響を受ける淡水の水域に変化した.その後,海退に伴うデルタの前進によって水域は南から次第に縮小し,3,000年前ごろには全域が湿地となり,次第に乾燥化して現在のような低地に変化した.

総説
  • 河村 愛, 河村 善也
    2023 年 62 巻 3 号 p. 121-132
    発行日: 2023/08/01
    公開日: 2023/08/17
    [早期公開] 公開日: 2023/08/01
    ジャーナル フリー

    タケネズミ類は穴居性の大型の齧歯目のグループで,東アジアでは現生のものと第四紀の化石として知られるものは,このグループのタケネズミ属にほぼ限定される.本論文では,東アジアでの更新世のタケネズミ属化石の分布を,データソースを示したうえで,分布図にまとめた.分布図から,前期更新世の産地のほとんどは中国南部にあり,前期更新世にはこの属が中国南部に広く分布していたこと,中・後期更新世の化石産地はそれよりはるかに多く,やはりほとんどが中国南部に分布し,この属がその時期にトウヨウゾウとともに中国南部の動物群の主要要素であったことがわかる.一方,中国北部には化石産地はほとんどなく,中国東北部や朝鮮半島,本州・四国・九州,琉球列島,台湾には化石産地はない.中期更新世の日本には,トウヨウゾウが中国南部から移入した時期があったが,それに伴って移入した種類は少ない.移入しなかったものの代表がタケネズミ属である.

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