西南日本外帯南部は, フィリピン海プレートがユーラシアプレートの下に低角度でもぐり込む南海トラフに面しており, 近くは南海道地震 (1946年) のように, これまで数多くの低角逆断層型巨大地震が発生してきたところである. 本研究は, 完新世における地殻変動を, 西南日本外帯の海岸地域に発達する離水地形 (変動地形) とその年代資料の分析を通して, 広域的かつ包括的に解明したものである. 完新世地殻変動の性格を西南日本外帯南部全域に広げて考察すれば, 一海溝系全体の中で各地の地殻変動様式の特徴を浮彫りにすることができる. 西南日本外帯南部は, 完新世を通して隆起の傾向にある. しかし, その変動様式は, 日向灘をはさんで東側と西側で異なる. すなわち, 東側では, 地震性隆起が卓越するが, 西側では, 活断層による地震とは直接関係しない背斜状の変動によって隆起している. この変動様式の違いは, フィリピン海プレートの年齢が九州-パラオ海嶺を境に大きく異なることに起因している.