第四紀研究
Online ISSN : 1881-8129
Print ISSN : 0418-2642
ISSN-L : 0418-2642
中国黄土高原の黄土-古土壌層序と大阪層群中の相当層準に含まれる石英について
肖 挙樂熊井 久雄吉川 周作益田 晴恵安 蕋生
著者情報
ジャーナル フリー

1993 年 32 巻 4 号 p. 209-217

詳細
抄録

中国中部黄土高原に位置する黄土-古土壌層序の砂質黄土と呼ばれる2層の黄土層と大阪層群の3層の非海成粘土層から, 石英を分離し, その粒度と粒度別の酸素同位体比を測定した. その結果, 黄土起源の風成塵は約百万年前にも, 偏西風によって日本まで運ばれていたことが明らかにされた. このような風成塵中の石英はほとんどが10μmより細かい粒子中に集まっていることが認められた. 大阪層群の非海成粘土層中の石英酸素同位体比は, 粒径によってはっきり変化している. このことは, 石英粒子が粒径ごとに地球化学的にまったく異なった供給地から運搬されてきたことを示している. 石英の粒度組成によると, 非海成粘土層はそれぞれの時代ごとに種々の堆積環境下にあったと推定される. すなわち, 古環境の変化に伴って堆積物を運搬する主要なものが風と流水との間で, その主従を入れかえたことがうかがえる. 黄土高原の砂質黄土と大阪層群の非海成粘土の粒度組成と粒度別の酸素同位体比は, 日本列島に発達する粘土堆積物に含まれる細粒石英粒子の研究が, アジア季節風の変遷史を復元する上で重要な役割を果たすことを示唆している.

著者関連情報
© 日本第四紀学会
前の記事 次の記事
feedback
Top