第四紀研究
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十和田火山東麓における八戸テフラ直下の埋没林への年輪年代学の適用
寺田 和雄太田 貞明鈴木 三男能城 修一辻 誠一郎
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1994 年 33 巻 3 号 p. 153-164

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抄録

青森県十和田湖東方には, 十和田火山起源の十和田八戸テフラにおおわれた最終氷期 (約12,650年前) の埋没林が広い地域で確認される. その埋没林から採集した埋没樹木22個体 (トウヒ属14個体, カラマツ属5個体, モミ属3個体) に年輪年代学の手法を適用したところ, トウヒ属とモミ属では属内でもまた属間でもクロスデイティングができた. しかしながら, すべて倒木状態で産出したカラマツ属は, 属内においても属間でもクロスデイティングができなかった. また, 樹皮の残存したトウヒ属8個体とモミ属3個体の立木の最終形成年輪の形成年が, クロスデイティングの結果, 一致したことから, 同じ年に死滅したことがわかった. さらに, この最終形成年輪の年輪構造の詳細な検討から, その年の晩材形成がすでに終了していることがわかった. 以上のことから, この埋没林は, ある年の秋から次の春までの間に起きた十和田火山の噴火により, 短時間のあいだに埋積され, 一斉に枯死したことが明らかになった.

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