北関東喜連川丘陵の早乙女において,関東ローム層中に含まれる微細石英の堆積速度の最近約10万年間の変動を検討した.微細石英のほとんどは,広域風成塵として冬季の北西モンスーンによって中国大陸より運搬され,日本列島に堆積する.したがって,その堆積速度の変動は冬季の北西モンスーンの強度の変動を示唆する.早乙女における微細石英の堆積速度は,SPECMAPによる酸素同位体比変化から,寒冷とされるstage 2,stage 4,stage 5bに対比される時期に高い値を,温暖とされるstage 1,stage 3,stage 5aに対比される時期に低い値を示した.このことは,寒冷なstageには北西モンスーン強度が増大し,温暖なstageには減少したことを示す.この結果は,中国大陸黄土高原における黄土-古土壌シークエンスの諸性質の分析かち明らかにされている北西モンスーンの強度の変動の結果と一致する.