第四紀研究
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兵庫県氷ノ山のササ植生下にみられる土壌の母材の累積性と生成環境
鳥居 厚志高原 光清野 嘉之
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1996 年 35 巻 4 号 p. 313-323

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抄録

兵庫県の氷ノ山地域で,厚層多腐植質A層を持つ土壌を対象に,土壌母材の累積性と土壌の生成環境を調べた.その結果,土壌中の細砂の一次鉱物組成は,どの試料でもおおむねテフラ起源粒子と基岩の岩片とが混在するものであった.粘土・シルト画分の鉱物組成は,すべての試料で,基岩に由来する鉱物と風成塵などの外来物質とが混在するものであった.また,チシマザサ起源と考えられる植物珪酸体が多量に集積し,下層ほど風化が進んでいた.これらの結果から,この地域の厚層多腐植質A層を持つ土壌は,無機母材と有機物とが平衡して供給され,上方に発達した累積的な土壌であることが明らかになった.また土壌中の花粉分析の結果から,ササ植生は土壌生成開始期から長く維持され,現在ブナ林が成立している箇所でも,草原や疎林などの植生から次第に閉鎖した森林へと移り変わってきたと推定された.以上の諸点から,この地域の累積的な土壌の生成には,地形的安定性や冷涼な気候,母材としてのテフラ物質の存在のほかに,長期間にわたるササ植生の存在が強く影響していることが推察された.

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