第四紀研究
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35 巻 , 4 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • 安藤 一男, 渡辺 満久
    1996 年 35 巻 4 号 p. 281-291
    発行日: 1996/10/31
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    武蔵野台地北部の開析谷~荒川低地において,ボーリング資料・14C年代測定値および珪藻群集の推移にもとづき,完新世の海進堆積物に埋積されている地形面群(立川面群)の区分・対比および編年を試みた.
    本地域の埋没地形面群は,Ar0面~Ar3面に区分される.Ar0面~Ar2面は,最終氷期後半のAT火山灰降下以前に離水している.ただし,Ar0面は最終氷期後半以前に形成された武蔵野面群に対比される可能性がある.Ar3面は,最も河床高度の低下した時期に形成されているが,その時代は海面最低下期以前である.荒川低地および柳瀬川谷底平野では,海面低下にともないAr0面~Ar3面が順次形成されたが,ほかの開析谷中ではAr1面形成後に,顕著な下刻は起こっていない.これは,古多摩川の流路変遷と気候の乾燥化による流量の減少によってもたらされた可能性がある.
  • 米田 穣, 吉田 邦夫, 吉永 淳, 森田 昌敏, 赤澤 威
    1996 年 35 巻 4 号 p. 293-303
    発行日: 1996/10/31
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    本研究は,縄文時代中期(4,000年前頃)から江戸時代(250年前頃)にわたる8遺跡から出土した人骨38個体を試料として,骨コラーゲンの炭素・窒素同位体分析および骨無機質における微量元素分析を行い,その結果に基づいて長野県における約4,000年間におよぶ食性の時代変遷を検討したものである.結果として第1に,同位体分析から,当地域では縄文時代中期から江戸時代に至るまで主食は基本的にC3植物であったと考えられる.縄文時代から中世にかけては,非常に強くC3植物に依存していたのに対し,江戸時代には海産物の利用の可能性が示唆された.内陸部で庶民の日常食として重要だったと論じられている雑穀類に関しては,今回の分析試料ではC4植物である雑穀を主食とした個体は検出されなかった.また,炭素同位体比から縄文時代北村遺跡出土人骨17個体について食性に性差の存在する可能性が示唆された.第2に,北村縄文人骨1個体で実施した微量元素分析からは,同位体分析で示唆されたC3植物食の内容がシイ・クリを中心とする可能性が示唆された.
  • 林 成多
    1996 年 35 巻 4 号 p. 305-312
    発行日: 1996/10/31
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    前橋台地に広く分布する前橋泥炭層(約14,000~13,000年前)からは,おもにネクイハムシ類やゲンゴロウ類などの湿地性の甲虫類の化石が産出する.産出した昆虫化石について検討した結果,北方系のゲンゴロウ類であるクロヒメゲンゴロウ属Ilybiusの一種が得られた.本標本は,クロヒメゲンゴロウ属では1種のみ本州に分布するキベリクロヒメゲンゴロウI.apicalisとは形態が異なるため,北海道を中心に分布するクロヒメゲンゴロウ属(3種)と,形態が類似しているマメゲンゴロウ属の大型種(1種)との比較を行った結果,ヨツボシクロヒメゲンゴロウI.weymarniであることが明らかになった.さらに,ヨツボシクロヒメゲンゴロウは,最終氷期の寒冷気候を示す気候推定の指標性昆虫であることを示し,生息していた古環境について考察した.
  • 鳥居 厚志, 高原 光, 清野 嘉之
    1996 年 35 巻 4 号 p. 313-323
    発行日: 1996/10/31
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    兵庫県の氷ノ山地域で,厚層多腐植質A層を持つ土壌を対象に,土壌母材の累積性と土壌の生成環境を調べた.その結果,土壌中の細砂の一次鉱物組成は,どの試料でもおおむねテフラ起源粒子と基岩の岩片とが混在するものであった.粘土・シルト画分の鉱物組成は,すべての試料で,基岩に由来する鉱物と風成塵などの外来物質とが混在するものであった.また,チシマザサ起源と考えられる植物珪酸体が多量に集積し,下層ほど風化が進んでいた.これらの結果から,この地域の厚層多腐植質A層を持つ土壌は,無機母材と有機物とが平衡して供給され,上方に発達した累積的な土壌であることが明らかになった.また土壌中の花粉分析の結果から,ササ植生は土壌生成開始期から長く維持され,現在ブナ林が成立している箇所でも,草原や疎林などの植生から次第に閉鎖した森林へと移り変わってきたと推定された.以上の諸点から,この地域の累積的な土壌の生成には,地形的安定性や冷涼な気候,母材としてのテフラ物質の存在のほかに,長期間にわたるササ植生の存在が強く影響していることが推察された.
  • 嶋田 繁, 増渕 和夫, 中野 守久, 叶内 敦子, 杉原 重夫
    1996 年 35 巻 4 号 p. 325-332
    発行日: 1996/10/31
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    東京低地,王子付近の埋没立川段丘面(本研究では王子埋没段丘面と呼ぶ)上において,機械式のオールコアボーリングを行い,その地質層序を明らかにした.またテフラの同定,14C年代測定,珪藻分析,花粉分析を行って,同段丘面の形成年代と形成環境を考察した.
    その結果,王子埋没段丘は下位から砂礫層,極細砂~シルト層,泥炭質粘土層,埋没ローム層,黒ボク土層からなることが明らかになった.段丘礫層の頂面高度などから,当段丘面はいわゆる本所台地よりも一段高位の段丘面に対比される.ローム層中に介在するテフラや14C年代測定値から,段丘礫層の形成年代は約4万年前に遡ることが考えられ,王子埋没段丘はMarine Isotope StageのStage 3に対比される可能性がある.花粉分析の結果から,段丘形成期は現在よりも冷涼な気候下であったと考えられる.また珪藻分析の結果では,この付近は段丘礫層堆積後すぐに乾陸化したのではなく,少なくとも数千年間,自然堤防帯の堤間低地にある沼沢地(後背湿地)の環境であったと推定される.
  • 楡井 尊
    1996 年 35 巻 4 号 p. 333-338
    発行日: 1996/10/31
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    現生ハリゲヤキ属の花粉形態は,彫紋が円頭疣状紋で,ニレ属-ケヤキ属がしわ状紋ないし網状紋である.したがって,ハリゲヤキ属はニレ属-ケヤキ属とは区別できる.上部更新統古谷泥層および中部更新統御殿峠礫層上部から記録された,円頭状疣状紋を呈するcf.Ulmus-Zelkova花粉化石は,現生花粉との比較に基づき,ハリゲヤキ属に同定された.
  • 斉藤 尚人, クリスタル・アッシュ(大町APm,BP)研究会
    1996 年 35 巻 4 号 p. 339-345
    発行日: 1996/10/31
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    近年,関東甲信越一帯の多くの露頭で,中期更新世の指標テフラである“大町APmテフラ群ならびにAPmテフラに類似した層相を示すテフラ群”が識別されるようになってきた.いずれも北アルプスの焼岳周辺が給源と推定されており,石英・黒雲母・斜長石・角閃石・鉄鉱物・ジルコンを斑晶鉱物として含むテフラである.これらのテフラの対比をおこなうことは,中部地方とその周辺地域の古環境,火山活動史や構造・地形発達史などを解明する上で重要である.
    本稿では,“大町APmテフラ群ならびにAPmテフラに類似した層相を示すテフラ群”の層序的位置関係を検討し,これらのテフラを含む各地の中部更新統の対比について論じる.
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