第四紀研究
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日本列島の南と北での縄文文化の成立
岡村 道雄
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1997 年 36 巻 5 号 p. 319-328

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抄録

人類活動と自然環境の因果関係を研究するためには,地域的に両者の実像と変遷を捉えなければならない.特に,人類活動に大きな影響を与える因子に,気候と動植物相が考えられるが,それらの日本列島内での時空的な実態はほとんど明らかにされていない.ここでは,両者の関連が考察でき,自然環境と道具の組み合わせに地域性が認められる九州南部,東海東部から関東,中部・信濃川中流域,北海道を中心に分析してみた.晩氷期に南九州・四国南岸から南関東の太平洋沿岸部に,クリ・クルミ・ドングリ類が実る中間温帯林,豊かな縄文的な森が形成されはじめ,植物性食料の採取・加工に磨石・石皿・土器など,森に増殖しはじめたシカ・イノシシなどの狩猟に落とし穴や石鏃が用いられはじめた.一方,列島の北半は,完新世になっても旧石器時代的な寒冷気候が継続し,北アジアと同一歩調で細石刃が発達した.本州では少量の土器が用いられるが,木の葉形の石槍,打製石斧,有舌尖頭器を用いた狩猟を中心とした生業が続き,本州中部を境に北と南の縄文文化が成立した.

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