第四紀研究
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喜界島の更新世堆積物とそのウラン系列年代について
大村 明雄佐々木 圭一寺尾 大介村上 和男
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2000 年 39 巻 1 号 p. 55-68

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抄録

喜界島に分布する更新統は,酸素同位体ステージ9以前の中部更新統と,その上位を不整合に覆う上部更新統から成る.最近の地質調査と230Th/234U年代測定により,後者にはステージ5e・5cおよび5aの礁成サンゴ石灰岩のほか,70~40ka当時の礁成石灰岩も含まれ,それが喜界島の南西部から中西部を経て北東部までの高度20~65mの地域に点在することが明らかになった.本島の段丘構成層としての上部更新統は,いずれの段丘においても薄く,その岩相が側方へ著しく変化する.それは,各更新世段丘の侵食作用が,ステージ9以前の更新世中期からステージ3までの堆積年代の異なる多様な礁複合体構成物を同一段丘面上に露出させたためといえる.
また,本島でもっとも広い,中川(1969)が川峰段丘と呼んだ段丘下には,ステージ5e以降に堆積した各種の炭酸塩堆積物が認められる.それらは下位から上位に向け,苔虫質石灰岩・大型底生有孔虫石灰岩・石灰藻球石灰岩・細粒砕屑石灰岩・粗粒砕屑石灰岩およびサンゴ石灰岩と岩相を変化させている.このような岩相の垂直変化を示す堆積物は,Tsuji(1993)によって報告された宮古諸島沖の島棚-島棚斜面の現世炭酸塩堆積相やそれらの分布水深との比較から,ステージ5eからステージ3にかけての相対的海面低下期に,外側島棚から水深5m以浅に堆積した上方浅海化シークエンスであるといえる.

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