約7,300年前以降をカバーするピストンコア試料を用いて,完新世におけるオホーツク海南西部の古海洋環境復元を目的とした珪藻分析を行った.そして,産出する珪藻群集は全層準を通じて,高生産指標種および海氷指標種が優占し,前者が現世に向かって増加すること,宗谷暖流を指標する温暖種Fragilariopsis doliolusが低頻度ながらパルス状に産出することを明らかにした.完新世には南西オホーツク海で温暖水がパルス的に流入し,同時に生産性も向上してきたことが示唆される.そして,温暖種のパルス状産出は,日本海で見出された対馬暖流の脈動だけではなく,北海道東部オホーツク沿岸地域の海水準変動曲線や,遺跡中に出土する温暖性二枚貝遺骸の時間分布とも調和する.