第四紀研究
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喜界島の離水サンゴ礁段丘上に発達した土壌の年代測定
とくに赤黄色土の絶対年代について
永塚 鎮男前島 勇治
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2001 年 40 巻 2 号 p. 137-147

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抄録

わが国の古赤色土の生成時期に関しては,鮮新世末~更新世初期,中期更新世,後期更新世などの諸説があり,未だ定説が得られていない.この問題を解決するためには,赤色土の生成速度すなわち土壌が発達しはじめてから赤色土の状態に達するまでに要する時間を明らかにすることが必要と考えられる.本研究では,すでに多数の化石サンゴの放射年代測定値に基づいて後期更新世の氷河性海面変動と平均隆起速度が明らかにされている喜界島を対象として,氷河性海面変動曲線と平均隆起速度直線を組み合わせた方法によって,離水サンゴ礁段丘上に発達した土壌の絶対年代を推定することを試みた.得られた結果は,以下のとおりである.
1.離水後約1,500年間は土壌生成はほとんど進行せず,露岩地の状態が続く.
2.約3,000年で(A)/R断面を示す固結岩屑土ができはじめる.
3.約3,500~3,900年経過すると,遊離の炭酸カルシウムの存在下で腐植集積作用が進行し,Ah/R断面を示す初生レンジナ様土が形成される.
4.約35,000~40,000年の土壌では,遊離の炭酸カルシウムはAh層からほぼ完全に溶脱されるとともに,腐植の分解が始まり,Ah/C/R断面を示すレンジナ様土になる.
5.約50,000~55,000年の土壌はAh/Bw/C断面を示す褐色レンジナ様土に変化し,この段階では粘土化作用が進むが,粘土の機械的移動は生じていない.
6.約70,000~80,000年経過すると,遊離の炭酸カルシウムは土層からほぼ完全に失われ,腐植の分解と粘土の機械的移動が進行し,A/Bt/C断面を示すテラフスカ様土が生成する.
7.約95,000~100,000年経過すると,わずかに塩基未飽和が現れるとともに,赤色化作用が進んでテラロッサ様土が生成する.
8.約120,000~125,000年経過すると,交換性陽イオンの溶脱がかなり進行するが,塩基飽和度はなお35%より高く,テラロッサ様土と赤黄色土の中間的な土壌が生成している.
以上の結果から,湿潤亜熱帯多雨林気候地域の離水サンゴ礁段丘上で赤黄色土が生成するためには,約125,000年の年月が必要と考えられる.

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