第四紀研究
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イネ第2葉に形成される珪酸体の微細構造解析と元素分析
大越 昌子宮村 新一
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2004 年 43 巻 2 号 p. 113-128

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抄録

土壌から,あるいは遺跡から出土するイネ科植物起源の珪酸体は,植物種による固有の形態を有することから,イネ科植物の種類を同定する上で大変有用なものである.しかし,これらの珪酸体が細胞のどの部分に相当するのかは明らかではない.本研究では,イネ(Oryza sativa L.)第2葉の表皮組織中の珪酸細胞と,長細胞における珪酸の集積部位を明らかにする目的で,加圧固定法を応用した透過型電子顕微鏡(TEM)観察を行った.その結果,珪酸細胞ではクチクラ層下部,二次細胞壁および細胞質に高電子密度の微粒子が集積することが明らかになった.また,二次細胞壁を形成しない長細胞では,クチクラ層下部,外界側一次細胞壁(外層・中層)および細胞質内の液胞に,多量の微粒子が集積することが明らかになった.個々の微粒子の元素組成をエネルギーフィルタ透過型電子顕微鏡(EF-TEM)で分析したところ,これらの微粒子がSi原子の酸化物(SiO2)であることが明らかになった.

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