抄録
離婚当初は面会交流に対して後ろ向きだったが現在は前向きな気持ちになっている同居母親11 名を対象にインタビュー調査を行い,面会交流に対する意識が変化するプロセスと変化の要因を修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチによって分析した。同居母親は元夫への嫌悪感や面会交流に対する不安と不満を持ちながらも面会交流を行い続けることによって,自分にとっても面会交流のメリットがあることを実感し,面会交流を通じて元夫を見直すようになっていった。子どもが面会交流を喜んでいること,家族や友人の支えによって同居母親が心理的に安定したこと,時間の経過なども,同居母親の気持ちが変化する要因であった。子どもと両親との関係は,父とは甘やかしてくれる関係,母とはしつけに対して口答えすることはあるが深い絆のある関係と,それぞれ役割は異なるがどちらとも親密な関係を形成していた。こうした変化は面会交流を行っていたからこそ生じた変化であるが,その前提として本調査の協力者達は父母間の関係は悪くても父子関係は悪くなく,養育費の支払いを含む父親の協力的な関わりがあり,母親が自分の気持ちより子どもの気持ちを優先することができていたことも影響していると考えられる。