抄録
本研究の目的は,離別母子世帯における非同居父と子との交流が子にどのような影響を及ぼすのか,を検討することである.無作為抽出にもとづく確率標本データを用いて,中学校3 年生の子のいる母子世帯について,非同居父と子との会話頻度,非同居父から子へのサポートが子の自己肯定感に及ぼす影響を計量的に検討した.会話頻度,サポートどちらの項目も欠損値が過半数を占めていたが,欠損値を含めておこなった分析,欠損値を示したデータを除外して無回答傾向を統制しておこなった分析,いずれにおいても女子においては父と「友達のこと」について会話する頻度が高いほど,また父が「自分のことをわかっている」と思えるほど,有意に自己肯定感が高い傾向が示された.ただし,以上の傾向は男子には示されなかった.非同居父は女子に対して表出的なサポートの提供者として少なからぬ役割を有し
ているように思われる.このことは,非同居父と子との関係の継続が子どもにとって利益となる可能性を示している.