抄録
本研究では,親の離婚を経験した30歳代前半の前成人期を迎えている2人の女性に対して,親の離婚が自分の生き方や人生に影響を及ぼしていることや親の離婚に対する考え方の変化に焦点を当て,PAC分析(Personal Attitude Construct:個人別態度構造分析)を用いて,主観的な語りに関する検討を行った。筆者は,約13年前に,当時大学3年生であった調査協力者である2名に対して,親の離婚に関する半構造化面接による調査を実施した。
その結果,「結婚をめぐる問いの現前化」,「大人になった娘による父親評価」,「大人になって親の離婚経験を語ることの意味」の3つの視点から考察を行った。身近な人の結婚式に立ち会う機会が増えることから,前成人期では,結婚をめぐる問いが現実的になる。結婚をしても離婚をする選択肢もあるという,親の離婚経験が自らの判断基準として作用している面もみられた。また,配慮に欠けるような父親の態度や振る舞いは,娘との信頼関係を損ねることから,一人の人間として敬意を向ける対象とはならないだろう。大人として見られることにより,親が過去の事実を話したり,周囲の人物から別居親の家族関係を知らされる場合もある。成長した自己を確かめるとともに,親の離婚をめぐる自らの人生の軌跡が統合されるうえでも,大人になってから親の離婚にまつわる多面的な情報や新たな認識を得て,それらを包括した経験を他者に語ることに意味があるのではないだろうか。