2024 年 31 巻 2 号 p. 69-88
[目的]高齢者虐待防止のための体制整備等の取組みの義務化が定められた2021年度の「介護報酬改定・基準省令改正」の翌年度における介護サービス施設・事業所の取組みの現状と課題を明らかにする.[方法]東海3県下の介護サービス施設・事業所の施設長・管理者等を対象にWeb調査をした.[結果]介護老人福祉施設は他の施設・事業所に比べ,「虐待防止委員会開催回数」が有意に多く,「複数でのケア体制および専門家による相談体制や虐待防止マニュアルを整備していない割合」が有意に低かった.しかし,「虐待発生による行政指導を受けた割合」が有意に高く,「虐待防止研修会の参加者に管理職を含めている割合」が有意に低かった.[結論]虐待の発生割合が高いことが推察される介護老人福祉施設では,形骸化が懸念される取組みの強化に向け管理職の研修会参加を促し,職員全員が共通認識を持つことが緊要である.