介護福祉学
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原著論文
  • 横山 さつき
    2024 年31 巻2 号 p. 69-88
    発行日: 2024年
    公開日: 2025/09/30
    ジャーナル フリー

    [目的]高齢者虐待防止のための体制整備等の取組みの義務化が定められた2021年度の「介護報酬改定・基準省令改正」の翌年度における介護サービス施設・事業所の取組みの現状と課題を明らかにする.[方法]東海3県下の介護サービス施設・事業所の施設長・管理者等を対象にWeb調査をした.[結果]介護老人福祉施設は他の施設・事業所に比べ,「虐待防止委員会開催回数」が有意に多く,「複数でのケア体制および専門家による相談体制や虐待防止マニュアルを整備していない割合」が有意に低かった.しかし,「虐待発生による行政指導を受けた割合」が有意に高く,「虐待防止研修会の参加者に管理職を含めている割合」が有意に低かった.[結論]虐待の発生割合が高いことが推察される介護老人福祉施設では,形骸化が懸念される取組みの強化に向け管理職の研修会参加を促し,職員全員が共通認識を持つことが緊要である.

  • 林 雅美
    2024 年31 巻2 号 p. 89-101
    発行日: 2024年
    公開日: 2025/09/30
    ジャーナル フリー

    [目的]介護福祉士の専門職における自律性の実態と,自律性に影響する要因を明らかにすることを目的とした.[方法]特別養護老人ホーム400施設,介護福祉士2,000名に無記名自記式質問紙調査をし,介護福祉士の専門職における自律性と個人属性,仕事に対する満足感との関連を分析した.[結果]318名(女性178名・男性140名)を分析対象とした.専門職的自律性は,性別と介護福祉職として従事した経験年数に有意差があった.ロジスティック回帰分析の結果,女性は男性に比べ2.405倍,また介護福祉職としての経験が25~29年では5.823倍,職務内容に対する満足感が高い場合7.040倍と自律性が高かった.[結論]介護福祉士の自律性は,性別,介護福祉職としての経験年数,職務内容の満足感に影響を受けることが示唆された.特に女性であること,介護職として経験年数が長いこと,職務内容に満足していることが高い自律性を示した.

  • 石鍋 浩, 野口 代, 梓川 一
    2024 年31 巻2 号 p. 102-114
    発行日: 2024年
    公開日: 2025/09/30
    ジャーナル フリー

    [背景と目的]高齢者虐待は介護現場が抱える問題の1つである.外国人と日本人の協働がすでに始まっているが,彼らによる高齢者虐待認識は不明な点が多い.本研究では,介護・福祉領域を専攻する留学生と日本人学生による高齢者虐待認識を説明する要素を明らかにすることを目的とした.[方法]高齢者虐待認識を目的変数,顕在的態度,潜在的態度,祖父母との同居経験,出身などを説明変数とし,重回帰分析を行った.[結果]高齢者虐待認識の高さと「出身」との関連が認められた.また,高齢者に対する顕在的態度,潜在的態度は,日本人に比べ留学生の得点が有意に高かった.高齢者虐待認識に対して日本人学生より留学生のほうがセンシティブであることが示唆された.[結論]介護・福祉専攻学生の高齢者虐待認識の一端が明らかになった.高齢者虐待に関しては,先行研究の指摘する「外国人と入所者とのトラブル」の懸念の可能性は小さいことが示唆された.

  • 渡邉 泰夫, 笠原 幸子
    2024 年31 巻2 号 p. 115-126
    発行日: 2024年
    公開日: 2025/09/30
    ジャーナル フリー

    [目的]介護福祉士が行うリフレクションに関連する要因を定量的に明らかにする.[方法]介護老人福祉施設で勤務する介護福祉士を対象に,2023年12月1日~2024年1月31日の期間で量的調査を行った.有効回答率は30.5%であった.介護福祉士が行うリフレクションを従属変数,「主体的な学び」(10項目)を因子分析し得られた各因子を独立変数,「性別」,「実務経験年数」をコントロール変数として投入し重回帰分析を行った.[結果]介護福祉士が行うリフレクションに対して,「介護福祉士として主体的に学ぶ姿勢」と「建設的な職場環境」が0.1%水準で有意な正の関連を示した.[結論]主体的に学ぶ姿勢をもつ介護福祉士,職場内でよりよいケアについて話し合うことがあり,互いに支え合う雰囲気がある建設的な職場環境で働いている介護福祉士ほどリフレクションを行なっていた.

実践・事例報告
  • 産賀 崇由, 源嶋 明人, 山根 洋一
    2024 年31 巻2 号 p. 127-132
    発行日: 2024年
    公開日: 2025/09/30
    ジャーナル フリー

    [目的]終末期高齢がん患者が,本人および家族の希望によりデイサービスと宿泊サービスを併用して利用することで,最期まで本人の意思と尊厳を尊重しつつ穏やかな看取りが行われた.しかし,介護保険法や厚生労働省の指針においてデイサービスや宿泊サービス利用中の看取りについて定めがないため,その可能性と有用性を分析する.[方法]本事例の70代女性は直腸がんおよび多発性肺転移の既往歴があったが,デイサービスと宿泊サービスを併用することにより高いQOLを維持できた.利用開始から10カ月後,宿泊サービス利用中に施設長,夜勤介護者,家族により穏やかに最期の看取りが行われた.施設長が事例をまとめ,関係者から事例報告の了承を得た.[結果]デイサービスと宿泊サービスを併用した看取りは可能であり有用性がある.[結論]デイサービスと宿泊サービスが併用される場合の看取りについて,国により明確な指針が立てられる必要がある.

特集:介護福祉教育
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