抄録
再エネ由来の水素をカーボンニュートラル燃料として車両に利用する研究開発が行われている。圧縮水素の利用が実用化で先行しているが、より高密度の液体水素は航続距離の観点で有利になるため、特に大型車への適用が検討されている。液体水素の車両への充填と燃料電池スタックへの供給時に重要となる物理現象は凝縮・蒸発であるが、これらに関する物理現象及び水素の物性値は十分に解明されていない。実験では、高精度に短時間のミクロな凝縮・蒸発現象を観測することは困難であり、水素の量子効果を考慮した分子動力学 (MD) 法による水素の凝縮・蒸発の現象の解明が期待されている。JARI と琉球大学は共同で、水素の凝縮・蒸発に関する物理現象の理解を進める研究を行っている。ミクロな凝縮・蒸発速度の解明が進めば、よりマクロな流体の数値シミュレーションによって液体水素容器内の相変化を伴う物理現象の理解が進み、研究開発の促進が期待される。