JARI Research Journal
Online ISSN : 2759-4602
2022 巻, 10 号
JARI Research Journal 2022年10月号
選択された号の論文の16件中1~16を表示しています
2022年度特集号 特集: 「カーボンニュートラル~自動車分野への貢献~」
表紙・目次・掲載区分・編集後記・裏表紙
巻頭言
講演記事
講演
JARI投稿記事
研究速報
  • 柏倉 桐子, 浅野 幸子
    原稿種別: 研究速報
    2022 年 2022 巻 10 号 論文ID: JRJ20221008
    発行日: 2022年
    公開日: 2025/01/21
    研究報告書・技術報告書 フリー
    ガソリン乗用車の排出ガスに対する低温環境の影響を調査した.測定物質は、粒子状物質(PM),固体粒子状物質(PN)数,温室効果ガス(GHG)成分(二酸化炭素(CO2),亜酸化窒素,メタン)である. PM排出量への低温影響は供試車両の燃料噴射制御によって異なった.暖機始動条件において,PFI車は23℃で不検出扱いとなったが,0℃や-7℃の低温環境になると排出が確認された.一方,DI車への低温影響は暖機始動条件では確認されなかった.冷機始動条件においてはPFI車とDI車のどちらでも低温になるほど排出量が増加する傾向を示した. PN排出量への低温影響も供試車両の燃料噴射制御によって異なった.暖機始動条件において,PFI車 は低温になると排出量が増加したが,DI車では大きな変化が見られず低温影響が確認されなかった.冷機始動条件ではいずれの供試車両でも低温影響が確認され,環境温度が低くなると排出量が増加した. GHG排出量は始動条件に関わらず低温になるほど高くなり,排出量への低温影響が確認された.GHG排出量への寄与はCO2排出量が約99%以上で最も高いため,GHG排出量への低温影響はCO2排出量への低温影響が反映されていた.CO2排出量が低温影響を受ける主な原因は,暖機始動条件においてはアイドリングストップ機能の停止と走行抵抗が高くなることの2つが挙げられた.また,冷機始動条件では,2つの原因に加え,始動時のリッチ噴射や潤滑油粘度増加等の駆動系の摩擦影響が大きくなることであると推測された.
技術資料
  • 松岡 正紘, 伊藤 貴之
    原稿種別: 技術資料
    2022 年 2022 巻 10 号 論文ID: JRJ20221009
    発行日: 2022年
    公開日: 2025/01/21
    研究報告書・技術報告書 フリー
    エンジンの設計・開発において,CFD(Computational Fluid Dynamics)などの MBD(Model Based Development)が行われている.エンジン筒内における実現象を表現するモデルのひとつに燃料噴霧モデルがある.これは,混合気形成過程を再現する上で重要となり,インジェクタの特性や雰囲気条件等に応じたモデル定数の同定が必要とされる.一般的に,燃料噴霧モデル定数の同定は,定容容器等で取得された噴霧可視化実験等の結果を用いて行われるが,その手法は確立されておらず,試行錯誤を伴う多大な工数が必要とされる. 本稿では,流体計算ソルバ(HINOCA)と最適化ソフト(mode FRONTER)を連成した効率的な噴霧モデル定数の同定方法を構築したので,その内容を紹介する
解説
研究活動紹介
  • 松田 佳之, 高橋 研人, 沼田 智昭, 清水 貴弘, 今村 大地
    原稿種別: 研究活動紹介
    2022 年 2022 巻 10 号 論文ID: JRJ20221003
    発行日: 2022年
    公開日: 2025/01/21
    研究報告書・技術報告書 フリー
    JARIでは,1998年から(国研)新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託により,水素・燃料電池に係る研究開発や実証事業,基準・標準化等の普及基盤整備を進めてきた.その取り組みの一つであるFCV用水素品質規格は,JARIで取得した結果をもとに,国際標準化機構(ISO)における国際規格の審議が開始され,欧州,米国などと協調しながら日本が審議を主導してきた.また,水素中不純物の評価技術をもとに,空気中の微量成分による燃料電池への影響度についても評価するとともに,被毒メカニズムを考慮した回復手法を提案してきた.本稿では,このような燃料電池における不純物の影響評価に関するこれまでのJARIにおける取り組みを紹介する.
  • 清水 貴弘
    原稿種別: 研究活動紹介
    2022 年 2022 巻 10 号 論文ID: JRJ20221004
    発行日: 2022年
    公開日: 2025/01/21
    研究報告書・技術報告書 フリー
    透過電子顕微鏡 (Transmission Electron Microscope, TEM) は観察試料に電子線を照射し,試料を透過した電子線から,試料の形状やサイズ,結晶性のような様々な情報を解析する装置である.自動車に関連する研究開発において,TEMは大気汚染物質である排気ガスを浄化する触媒の観察や排気ガスにより影響を受けた実験用動物の臓器の観察等の従来の用途に加え,近年では電気自動車に必要な蓄電池や燃料電池材料の微細構造の観察にも使われている.弊所では,地球温暖化の防止に貢献するため,2000年代より水素・燃料電池に関わる研究開発に取り組んでおり,これまでに固体高分子形燃料電池 (Polymer Electrolyte Fuel Cell, PEFC) の共通の評価方法であるセル評価解析プロトコルの開発を進めてきた.プロトコル開発では,耐久劣化加速試験前後の燃料電池の電気化学的特性と燃料電池材料の構造変化の関係を明らかにすることが必要であり,電極触媒等のナノメートルサイズの燃料電池材料の微細構造を観察するためTEMを利用した.2010年代からは科研費等の支援を受けて所外のTEMを利用し,電極触媒の劣化機構解明を目的として,燃料電池の発電環境を模擬したガス雰囲気中で電極触媒の構造変化を動的にTEM観察する「その場観察技術」等の解析手法を開発してきた.本報では,自動車の環境・エネルギー分野での研究を推進するため,2022年にJARIにTEMが導入されたことを受け,装置の概要と主な機能をPEFC用電極触媒の観察を例に紹介する.
  • 冨岡 純一
    原稿種別: 研究活動紹介
    2022 年 2022 巻 10 号 論文ID: JRJ20221006
    発行日: 2022年
    公開日: 2025/01/21
    研究報告書・技術報告書 フリー
    燃料電池自動車(FCV)・移動体用技術開発ロードマップ(NEDO、2017年)では、FCVの航続距離の達成目標を2030年頃までに800km以上、2040年頃までに1000km以上と設定している。大型トラック・バス等については、先行する乗用車の燃料電池技術を応用した技術開発が進められているが、圧縮水素貯蔵では貯蔵密度の大幅向上が見込めないため、荷室容積を確保した上での航続距離の向上に限界が見えてきている。そこで、水素貯蔵密度の大幅向上が期待される液体水素貯蔵の可能性を調査するため、2020年度~2021年度にNEDO委託調査「大型FCV燃料装置用液化水素技術に係るフィジビリティ調査」を一般社団法人日本自動車研究所と岩谷産業株式会社で実施した。本稿では、調査結果の一部を紹介する。
  • 山田 英助, 冨岡 純一, 永島 浩樹
    原稿種別: 研究活動紹介
    2022 年 2022 巻 10 号 論文ID: JRJ20221007
    発行日: 2022年
    公開日: 2025/01/21
    研究報告書・技術報告書 フリー
    再エネ由来の水素をカーボンニュートラル燃料として車両に利用する研究開発が行われている。圧縮水素の利用が実用化で先行しているが、より高密度の液体水素は航続距離の観点で有利になるため、特に大型車への適用が検討されている。液体水素の車両への充填と燃料電池スタックへの供給時に重要となる物理現象は凝縮・蒸発であるが、これらに関する物理現象及び水素の物性値は十分に解明されていない。実験では、高精度に短時間のミクロな凝縮・蒸発現象を観測することは困難であり、水素の量子効果を考慮した分子動力学 (MD) 法による水素の凝縮・蒸発の現象の解明が期待されている。JARI と琉球大学は共同で、水素の凝縮・蒸発に関する物理現象の理解を進める研究を行っている。ミクロな凝縮・蒸発速度の解明が進めば、よりマクロな流体の数値シミュレーションによって液体水素容器内の相変化を伴う物理現象の理解が進み、研究開発の促進が期待される。
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