抄録
ガソリン乗用車の排出ガスに対する低温環境の影響を調査した.測定物質は、粒子状物質(PM),固体粒子状物質(PN)数,温室効果ガス(GHG)成分(二酸化炭素(CO2),亜酸化窒素,メタン)である.
PM排出量への低温影響は供試車両の燃料噴射制御によって異なった.暖機始動条件において,PFI車は23℃で不検出扱いとなったが,0℃や-7℃の低温環境になると排出が確認された.一方,DI車への低温影響は暖機始動条件では確認されなかった.冷機始動条件においてはPFI車とDI車のどちらでも低温になるほど排出量が増加する傾向を示した.
PN排出量への低温影響も供試車両の燃料噴射制御によって異なった.暖機始動条件において,PFI車 は低温になると排出量が増加したが,DI車では大きな変化が見られず低温影響が確認されなかった.冷機始動条件ではいずれの供試車両でも低温影響が確認され,環境温度が低くなると排出量が増加した.
GHG排出量は始動条件に関わらず低温になるほど高くなり,排出量への低温影響が確認された.GHG排出量への寄与はCO2排出量が約99%以上で最も高いため,GHG排出量への低温影響はCO2排出量への低温影響が反映されていた.CO2排出量が低温影響を受ける主な原因は,暖機始動条件においてはアイドリングストップ機能の停止と走行抵抗が高くなることの2つが挙げられた.また,冷機始動条件では,2つの原因に加え,始動時のリッチ噴射や潤滑油粘度増加等の駆動系の摩擦影響が大きくなることであると推測された.