抄録
観光バスや路線バスへの衝突被害軽減ブレーキシステム(以下,AEBS: Advanced Emergency Braking System,UN-R131-01)1) やドライバ異常時対応システム(以下,EDSS: Emergency Driving Stop System)2) などの電気・電子制御システム(以下,E/Eシステム)の適用が進んでいる.これらE/Eシステムは機能安全規格ISO 26262 3) の適用対象であり,自動車安全度水準(以下,ASIL: Automotive Safety Integrity Level)を決定するために走行中のブレーキ系E/Eシステム故障による減速ハザードで車内事故(未衝突事故)が発生した場合のリスク評価が必要となる.このリスク評価は,ISO 26262にもとづき,着座および立姿勢乗客に対して,ハザード分析およびリスクアセスメント(3つのパラメータ;エクスポージャ評価,コントローラビリティ評価,シビアリティ評価から成る.以下,HARA:Hazard Analysis and Risk Assessment)を実施する必要があると考えられる.また,エンジン/トランスミッション系E/Eシステムの故障による加速ハザードについても同様にリスク評価が必要となる.そこで,バス車内事故を想定した乗客に関するシビアリティ評価(乗客の人命にどのような影響があるのか)やコントローラビリティ評価(ハザード[危険]が発生したときに危害の回避・制御の可能性)の判断材料となる事例について検討を行った.