抄録
自動車用潤滑油の省燃費性等の特性は、潤滑油添加剤が金属表面に作用して形成される反応膜の組成、構造に大きく依存する。そこで本研究では、アルキル鎖の異なる摩耗防止剤 ZnDTP (Zinc Dialkyldithiophosphate)のみ基油に添加した潤滑油を使用して時間を変えて摩擦試験を行い、金属試験片表面に反応膜を形成させ、HAXPES により反応膜成分の化学結合状態の推定を試みた。その結果、ZnDTP のアルキル基の長さが異なると主に反応膜を構成しているポリリン酸の分子鎖長の長さが、反応膜の表層部および内部のどちらにおいても異なると推定された。また、摩擦試験時間と反応膜の表層部、内部におけるポリリン酸の分子鎖長との関係は ZnDTP のアルキル基の長さにより異なると推定された。