抄録
国土交通省の自動運転車の安全技術ガイドライン1では自動運転車が満たすべき車両安全の定義を「自動運転車の運行設計領域において自動運転システムが引き起こす人身事故であって合理的に予見される防止可能な事故が生じないこと」としている。
また、日本自動車工業会の自動運転の安全性評価フレームワーク2では、この合理的に予見される事故をReasonably Foreseeable、合理的に予見できない事故をUnforeseeable、防止可能な事故をPreventable、防止不可能な事故をUnpreventableと定義し、その組み合わせを4象限マトリクスで表現している。
国連法規R157のUniform provisions concerning the approval of vehicles with regard to Automated Lane Keeping Systems 3 以下、「ALKS法規」というではReasonably Foreseeableにおいて、Preventable/Unpreventableの境界(以下、「Preventable境界」という)が提案されており、文献2)ではそのReasonably ForeseeableかつUnpreventableである領域(以下、「Unpreventable領域」という)において「緩和(結果として生じる損傷を低減することが唯一の選択肢」とされているしかしながら、この緩和については具体的な方法や指標は現在のところ提案されていない。この合理的に予見される防止不可能な事故で緩和を検討するためには、ALKS法規で示されているようなカットインシナリオにおいて、自車の速度、および他車の速度、車間距離、カットイン時の横速度などのパラメータが多岐にわたり、数千点の組み合わせになる。
そこで本研究では、ALKS法規で提案されている数千点におよぶシナリオを効率良く実施するために車両挙動シミュレーションをおこなった。そのシミュレーションはオープンソースの自動運転シミュレーターであるCARLA4を用い、AutoPilotシステムを仮の自動運転車の評価車両とし、防止不可能な事故を再現した。さらに事故時の乗員傷害の緩和を検討するためにLSDYNAによる衝突シミュレーションを実施し、その緩和の具体的な指標を検討した。