中小企業会計研究
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Robotic Process Automation(RPA)が税理士業務等に与える影響
RPA メーカー・ベンダー,税理士事務所へのインタビュー調査を基礎として
宗田 健一櫛部 幸子
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ジャーナル オープンアクセス

2024 年 2024 巻 10 号 p. 80-94

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抄録

 本稿は,ロボティック・プロセス・オートメーション(RPA)が税理士の行う税務代理,税務書類の作成および会計事務(財務書類の作成や会計帳簿の記帳の代行等の事務)(以下,「税理士業務等」とする)において,どのように導入され,活用されているのかについてインタビュー調査を用いて明らかにするものである。

 税理士業務等では,適時性や正確性が求められる。これらの業務の一部は定型的・反復的である一方,個々の事例では高度に専門的な判断を有するものもある。これらの業務とRPAとの関係を検討するために,まず,RPA メーカーの協力を得てRPA それ自体の製品特徴と限界について検討した。次に,RPA ベンダーの協力を得てRPA を導入する税理士事務所の特徴について確認した。最後に,RPA を実際に導入している税理士事務所へインタビュー調査を行い,① RPA の導入経緯と利用可能な税理士業務等,②導入効果が発揮されている業務とその工夫,③ RPA の導入による税理士の役割変化,④ RPA が会計情報作成プロセスに与える影響,⑤ RPA では対応することが困難ないし不適切な業務を明らかにした。

 これらの結果は,税理士業務等におけるRPA の導入とその効果,RPA が利用可能な業務と従来の業務に与える影響,RPA をより効果的に活用するための方法など,RPA に関するいくつかの重要な新しい洞察を提供するものである。さらにこの結果は,電子帳簿保存法やインボイス制度が始まった我が国において,デジタルデータを有効に活用することが不可避となった税理士業務等のみならず,会計専門家,中小企業,税務当局などの会計業界にとって,有益な示唆をもたらすと考えられる。

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© 2024 中小企業会計学会
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