2015 年 11 巻 1 号 p. 81-97
多くのテストでは,テスト全体の得点や各問題の正誤,受検者集団の中での序列などの情報が受検者にフィードバックされる.しかし,これらは学習のどこにつまずいているかについて有益な情報を提供しないため,学習改善に活用しにくい.こうした中で近年,学習内容の習得状況について詳細に診断するための方法として,認知診断モデル(cognitive diagnostic model)が注目されている.そこで本研究では,教研式標準学力検査 NRT「中学1年数学」に対して,認知診断モデルによる学習診断を適用し,その有用性を検討した.その結果,認知診断モデルを適用することで,テスト全体の得点や「数と式」「図形」などの内容領域別の得点からは知ることのできない診断情報が得られることが示された.また,認知診断による学習診断を利用する上での問題点と今後の課題について展望した.