2017 年 13 巻 1 号 p. 33-48
特異項目機能(differential item functioning, DIF)に関する方法論的研究とそれを応用した実践的研究が蓄積される中で,下位集団が3 以上かつ多値型データに対するDIF の検出事例は十分であるとは言えない.そこで本研究では,日本・シンガポール・マレーシア・タイの4 カ国のビジネスパーソンを対象に行われた「外向性」「統率性」「自律性」「調整性」を測定する多値型データに対して,熊谷(2012)の方法によってDIF 検出を行うことを目的とした.その結果,「外向性」「統率性」においてそれぞれ3 項目,2 項目のDIF 項目を検出し,定性的な解釈を加えることでその妥当性を確認した.また,項目純化前後の潜在特性尺度値θの標準誤差を比較し,DIF 項目を分析から除外してもそれほど大きな測定精度の低下は見られなかったことを確認した.最後に,DIF を引き起こす要因の一つとしての,テスト項目に内在する多次元性の影響の取り扱いが今後の課題として残された.