日本テスト学会誌
Online ISSN : 2433-7447
Print ISSN : 1880-9618
事例研究論文
思考発話法を用いた多肢選択式問題の解決プロセスの解明
-大学入試センター試験問題の国語既出問題を活用して-
益川 弘如白水 始根本 紘志一柳 智紀北澤 武河﨑 美保
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2018 年 14 巻 1 号 p. 51-70

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抄録

多肢選択式の問題について生徒がいかに思考し解決しているかを明らかにするために, 大学入試センター試験の国語問題2題を題材として,18 名の高校生を対象に思考発話法を用いた認知実験を行った.問題文の読み方や設問の解き方について,89%の生徒 が設問順に問題文の一部を読んでは解答する行動を取った.解決方略については,選択肢の選択方略 の多くは消去法で, 設問全体の54%が内容理解を踏まえた深い処理であり,15%が単語レベルの対応付け等の浅い処理だった.成績上位の生徒は,内容理解を踏まえた深い処理をして解答した設問数が多かったが,出題者が望む問題文全体の内容理解を踏まえた深い処理までは起きていなかった.センター試験の国語における多肢選択式問題は,設問単位で問題文を読解し,各設問の解決結果を相互に結び付けない浅い処理水準の読解と問題解決を助長している可能性がある.テストワイズネスも含めた解決過程の認知的解明は,高大接続改革に 貴重な資料を提供するとの示唆を得た.

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© 2018 日本テスト学会
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