本研究の目的は,小学校 6 年間の縦断データを用いて学力の発達的様相を分析することであった.ある私立小学校の児童 613 名(男子 275 名,女子 338 名)の 6 学年分の標準学力テスト(算数,国語)のデータを使用した.研究 1 では,潜在成長モデルによる分析を行った.その結果,モデルの適合度は良好でなく,小学校 6 年間の学力の変化には多様なパターンが混在することが示唆された.研究 2 では,山田 (1990) の手法を応用し,小学校 6 年間の学力の変化パターンの分類を試みた.その結果,算数,国語ともに代表的なパターンを見出した.さらに,それらは, 6 年間あまり変動のないタイプ,低学年で変動の激しいタイプ,高学年で変動が激しいタイプの3つに分類された.これらは,従来から指摘されてきた,できる子とできない子が早期に分離,固定化する傾向や,小学校の中学年で学力の停滞を示す児童が多く出現する現象とも符合した.