日本テスト学会誌
Online ISSN : 2433-7447
Print ISSN : 1880-9618
事例研究論文
項目反応理論と潜在クラス成長分析による自治体学力調査の再分析 算数・数学の学力格差とその変容
川口 俊明松尾 剛礒部 年晃樋口 裕介
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ジャーナル オープンアクセス

2019 年 15 巻 1 号 p. 121-134

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抄録

本稿は,ある自治体(A 市と仮称する)が実施した算数・数学の学力調査に,項目反応理論(IRT)による等化(Equating)を適用し,その結果を潜在クラス成長分析(LCGA)で分析することを通して,小学4 年生から中学3 年生までの学力格差の変容を明らかにしている。主な知見は以下の通りである。第一に,LCGA による分析の結果,小学4 年生から中学3 年生までの学力の変化は,四つのグループに分類できた。グループ間の学力差は4 年生の時点から存在し,変化の軌跡が他のグループと交わることは無かった。第二に,グループによって所属する子どもの特徴が異なっており,学力が低いほど,就学援助を受けている割合が高かった。また,男子の学力は,上下に二極化している傾向が見られた。IRT を利用しない場合,学力格差の拡大は十分に観測できなかったため,IRT を利用しない学力格差研究は,格差を過小評価している可能性がある。

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© 2019 日本テスト学会
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