2019 年 15 巻 1 号 p. 121-134
本稿は,ある自治体(A 市と仮称する)が実施した算数・数学の学力調査に,項目反応理論(IRT)による等化(Equating)を適用し,その結果を潜在クラス成長分析(LCGA)で分析することを通して,小学4 年生から中学3 年生までの学力格差の変容を明らかにしている。主な知見は以下の通りである。第一に,LCGA による分析の結果,小学4 年生から中学3 年生までの学力の変化は,四つのグループに分類できた。グループ間の学力差は4 年生の時点から存在し,変化の軌跡が他のグループと交わることは無かった。第二に,グループによって所属する子どもの特徴が異なっており,学力が低いほど,就学援助を受けている割合が高かった。また,男子の学力は,上下に二極化している傾向が見られた。IRT を利用しない場合,学力格差の拡大は十分に観測できなかったため,IRT を利用しない学力格差研究は,格差を過小評価している可能性がある。