2024 年 20 巻 1 号 p. 43-71
本研究の目的は,2020年以降に大学入試を直撃したさまざまな危機に対して,関係機関がどのように対応したのかを総括しながら,大学入試の危機対応に関する基本的考え方や今後の検討課題を提示することである。新型コロナウイルス感染症拡大,自然災害,試験当日の刺傷事件,不正行為など,令和3年度入試以降のさまざまな危機は,平時では暗黙に了解されてきた大学入試の前提を激しく揺さぶり,大学入試のあり方を改めて問い直す機会を提供した。本研究では,国や大学入試センターの方針,国立大学での対応事例をもとに課題を浮き彫りにし,それぞれの危機が再び起こった場合だけでなく,未知の危機が起こった場合にも参照できる,危機対応の枠組みについて示唆を得る。