2008 年 4 巻 1 号 p. 85-100
本論文の目的のひとつは, RWMHアルゴリズム (random-walk Metropolis-Hastings algorithm)における提案分布のスケール調整の自動化とマルコフ連鎖の収束判定の自動化をはかることである. そのため, Gelman, Roberts & Gilks (1996)に示唆されたアイディアに基づく並列型のMCMCアルゴリズム (Markov chain Monte Carlo algorithm) を提案する. 提案アルゴリズムの新しい特徴は, 提案分布のスケール調整とマルコフ連鎖の収束の確認が同時に完了し, その後ただちに有効なサンプルを得ることができる点である. 本論文のもうひとつの目的は, 提案アルゴリズムを項目反応モデルのひとつであるRaschモデルの母数推定に応用することである. シミュレーションの結果, Parallel-SCRWMHアルゴリズム (parallel single-component random-walk Metropolis-Hastings algorithm) によりRaschモデルの項目困難度母数を適切に推定できることがわかった.