小論文試験の採点において問題視される文字の美醜効果が, 実際に生じるか否かに関しては一貫した知見が得られていない. そこで本研究では, 文字の美醜効果を規定しうる要因として, (1)項目の解答内容の自由度, (2)受験者の年齢, (3)採点者のスキルの3つの要因をとりあげた.
本研究ではまずメタ分析を実施して, 3つの要因が文字の美醜効果に及ぼす影響を調べた. その結果, 受験者の年齢が低いほど, 文字の美醜効果の影響が大きいことが示唆された.
そこで次に, 受験者の年齢は, 受験者の作成する文章の質の差を介して文字の美醜効果の影響度を規定するという仮説を立て, その仮説を検討するために実験的に20名の採点者に小論文試験の採点をさせた. 採点結果を従属変数とし文字の美醜と文章の質を要因とした2要因分散分析の結果, 2つの要因間に交互作用は見られず, 文章の質が文字の美醜効果を規定していない可能性が示唆された.