日本テスト学会誌
Online ISSN : 2433-7447
Print ISSN : 1880-9618
事例研究論文
構造的性質を操作した国語テストにおける回答の検討
―中学生を対象にしたテストの実証研究―
安永 和央齋藤 信石井 秀宗
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2012 年 8 巻 1 号 p. 117-132

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抄録

本研究は,高校入試問題の国語テストを用いて,設問などの構造的性質を操作し,これらが受検者の回答に及ぼす影響について検討した。設問は,1)一文抜き出し問題(五字抜き出し,一文抜き出し),2)読解プロセス(情報の取り出し,解釈),3)空所の表記法(全て四角,一部カッコ),4)回答欄の字数制限,を操作した。これらを中学3年生493名に実施した。項目分析の結果,1)は,得点率及び識別力に影響を及ぼさないことがわかった。これは,採点者の負担軽減につながる知見である。2)は,「情報の取り出し」の方が得点率と識別力を高くすることが明らかとなった。3)は,空所の形を一部変えて表記する方が識別力を高くすることがわかった。4)は,回答欄では字数制限を設けないことが得点率及び識別力を高くすることが示唆された。以上から,構造的性質の違いが受検者の回答に影響を及ぼすことが示された。本研究の結果は,構造的性質を実証的に検討することの意義を示している。

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© 2012 日本テスト学会
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