視覚障害リハビリテーション研究発表大会プログラム・抄録集
第21回視覚障害リハビリテーション研究発表大会
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ポスター発表
中途視覚障害者の点字触読習得を阻むものはなにか?
―高齢視覚障害者とその他の視覚障害者の比較から―
*矢部 健三渡辺 文治喜多井 省次内野 大介角石 咲子加藤 正志
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p. 73

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抄録
【目的】
 中途視覚障害者には、点字触読の習得に大きな困難を抱えるケースが少なくない。過去2回の調査では、特に50代以降の中途視覚障害者で点字触読の習得が困難になることを報告した。今回は、高齢中途視覚障害者に点字触読訓練を実施する際に、どのような目標を設定すればよいかを検討するために、七沢更生ライトホームで実施した点字読み訓練の結果について、高齢中途視覚障害者とその他の中途視覚障害者を比較して報告する。

【方法】
対象者:1991年度~2011年度の当施設利用者478名(入所350名、通所128名)
調査方法:訓練記録の参照、訓練担当者などへの聞き取り
調査内容:基本属性、触知覚の状況、点字読み訓練の結果等
実施時期:2012年1月~2月

【結果と考察】
 点字読み訓練を実施した者は、261名で、その内、39歳以下の者(若年層)は85名(32.6%)、40歳以上64歳以下の者(中年層)は158名(60.5%)、65歳以上の者(高齢層)は18名(6.9%)であった。
 初期評価として実施した触知覚テストの結果は、若年層では最も得点の高いグループ(36~40点)の者が59.7%を占めたのに対し、中年層では31~35点の者が41.5%で最も多く、高齢層では21~25点の者が31.3%で最も多かった。
 点字触読訓練の結果では、点字読速度が実用段階(標準点字32マス18行1ページ10分未満)に到達した者が、若年層では22.4%、中年層では7.6%であったのに対し、高齢層で実用段階に到達した者はいなかった。一方、紹介程度(清音・濁音・拗音などの単語読みで終了)や構成学習(50音などの構成学習のみで終了)の段階の者は、高齢層では83.3%を占めた。紹介程度や構成学習の段階で終了した者が、若年層では31.8%、中年層でも64.6%であったのに比べると、その割合は非常に高かった。
 これらの結果から、高齢中途視覚障害者に点字触読訓練を実施する際の目標としては、まず清音・濁音・拗音・数字などの単語・短文読みが可能になる段階を設定することが妥当であるといえるだろう。
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© 2012 視覚障害リハビリテーション協会
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