日本心臓血管外科学会雑誌
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[大血管]
偽腔閉塞型大動脈解離を疑った IgG4関連胸部大動脈瘤の1例
松濱 稔小林 卓馬國原 孝後藤 智行
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2018 年 47 巻 2 号 p. 88-92

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抄録

IgG4関連疾患は血清IgG4高値,IgG4陽性形質細胞の浸潤,線維化を主体とした腫瘤性・肥厚性病変を呈する慢性疾患である.近年心血管領域でも報告があり治療戦略が模索されている.今回,術前に偽腔閉塞型大動脈解離を疑われ,術後IgG4関連胸部大動脈瘤と診断された症例を経験したので報告する.症例は70歳男性で咳嗽を主訴に来院した.既往歴に2度の後腹膜線維症があった.胸痛等の大動脈解離を疑うエピソードはなかったが,撮影されたCTにて径52 mmの偽腔閉塞型A型大動脈解離と診断され手術を行った.術中所見では上行大動脈は著明に壁肥厚した真性瘤で解離はなく,上行大動脈および部分弓部置換術を行った.病理組織学的診断で外膜に著明な肥厚とIgG4陽性形質細胞の浸潤を認めたが中膜への浸潤や大動脈解離の所見はなかった.術後血液検査で血中IgG4が基準値をこえており,包括診断基準におけるIgG4関連胸部大動脈瘤と診断した.同疾患には偽腔閉塞型大動脈解離と判別が難しい画像所見を示す症例が存在する一方で,大動脈解離や破裂の発症との関連を疑う報告もあるため注意が必要である.

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