資源環境問題に対する従来の社会心理学的アプローチにおいては,アンケート調査やアクション・プログラムなどに基づいて,人々の環境行動モデルおよび環境配慮行動へと導くモデルが提唱されている.しかし,環境問題においては状況依存性指向が強いため,環境配慮行動を促進する仮説モデルの再現性,一般性を検証することは困難である.本研究ではこの点に着目し,社会シミュレーション技法を用いて従来のアプローチでは困難とされている仮説モデルの有効性検証を試みる.
仮説モデルの構築において,本研究はLatanéらの社会的インパクトモデルを基礎にしている.Latanéらの研究と異なる点は,社会的インパクトモデルを行動評価アプローチモデルと置き換え,それと環境認知モデルを組み合わせた新たな環境アプローチモデルを提案している点である.また,ファジィ集合論を社会的インパクトモデルヘ取り入れ,行動評価アプローチモデルとの比較を行っている.その結果,環境認知アプローチは行動評価アプローチと比べ,少数派の抑制効果だけでなく,少数派のクラスタ形成を抑制するという結果を得ている.