シミュレーション&ゲーミング
Online ISSN : 2434-0472
Print ISSN : 1345-1499
13 巻, 1 号
選択された号の論文の19件中1~19を表示しています
巻頭言
投稿論文
  • 杉浦 淳吉
    2003 年 13 巻 1 号 p. 3-13
    発行日: 2003/06/25
    公開日: 2020/11/02
    ジャーナル フリー

    本論文では「説得納得ゲーム」という教育ゲームについて検討した.このゲームは,環境教育のツールとして開発・実践・改良された.このゲームの概略は以下のとおりである.1)プレーヤーは環境に配慮した消費行動を「アイディアカード」に書き出し,そのアイディアの内容を他のプレーヤーに説明し,さらに実行の「難易度」と多くの消費者が実行した場合の環境配慮の「社会的効果」をプレーヤー同士で評価する.2)プレーヤーを「説得する役割」と「説得される役割」に分け,説得する側は,説得される側に対して,アイディアカードに書かれた内容を実行するように説得する.説得される側は,理由をつけて断る.相手の説得に納得したら,カードに実行を約束する署名をする.3)一定時間で区切り,説得する側と説得される側の役割を交替する.それぞれの役割を2回ずつ経験し,最終的に獲得された署名の数に応じて得点を競う.以上のような説得的コミュニケーションに関わる諸要素を取り込んだこのゲームは,環境配慮行動の普及をテーマに設定された大学の授業および市民ワークショップにおける6つの運用事例における検討から,ゲームのバリエーションの設定により数人から数十人の単位での教育場面に適用可能であることが示された.また,環境教育に限らず,コミュニケーション教育や専門家教育のためのゲーミングとしての可能性や,研究ツールとしての可能性についても論じられた.

  • 垂澤 由美子, 広瀬 幸雄
    2003 年 13 巻 1 号 p. 14-20
    発行日: 2003/06/25
    公開日: 2020/11/02
    ジャーナル フリー

    地球環境の保全という共通利害へのコミットメントを人々に促すには,地球共同体としての全体世界への帰属意識を育てることが必要である.しかし現状では,貧富の格差が,世界への帰属意識を阻害し,地球保全という共通課題への取り組みを複雑にしている.これまでの研究では,先進および途上地域の世界への帰属意識の持ち方はよくわかっていない.本研究では,先進および途上地域のメンバーが,共通目標に貢献することを通じて,世界への帰属意識を高めていくのかを,仮想世界ゲーム(広瀬,1997)において検討した.

    ゲーム実施の結果,先進および途上地域は,環境問題という共通の危機に直面し,対等な立場で協力することによって,世界への帰属意識を高めうることが示されたまた同時に地域への帰属意識も問題発生後に高まっていた.これについて,問題が解決しても資源格差は解消しないため,地域という境界はなくならずに,地域への帰属意識も持ち続けたと考察した.

    寄金行動と帰属意識の関連については,途上地域では,寄金行動と世界への帰属意識との直接的な関連が見られたのに対し,先進地域では,寄金行動と地域への帰属意識との直接的な関連が見られた.途上地域の人は,寄金という協力をあまりにしていないにもかかわらず,世界への帰属意識を高めていく一方で,先進地域の人は,多くの寄金を負担するという協力によって,世界での優越感を強めていく可能性について言及した.

  • 松田 剛, 開 一夫, 嶋田 総太郎, 小田 一郎
    2003 年 13 巻 1 号 p. 21-31
    発行日: 2003/06/25
    公開日: 2020/11/02
    ジャーナル フリー

    本研究では,テレビゲームの種類による脳活動の違いを検討するため,健常成人9名(男性8名,女性1名,平均25.2歳)が4種類のテレビゲームをしているときの脳血流変化を近赤外分光法(NIRS)を用いて計測した.また比較のために単純な加算作業を行っているときの計測も行った.使用したテレビゲームは,反射型ゲームであるシューティングとリズムアクション,思考型ゲームであるブロック落としとサイコロパズルであった.計測装置として24チャンネルの同時計測が可能なOMM-1080S(島津製作所)を用い,正中前頭部(Fz)を中心とした9cm四方の領域を計測した.

    その結果,テレビゲーム中は正中前頭部近傍の広い範囲で血流が減少しており,テレビゲーム中は前頭前野の活動がほとんど生じていないことが示唆された.またプロック落としでは右前頭前部に,加算作業では両側の前頭前部に局所的な活動の増加が認められた.これらはワーキングメモリの活動を反映していると考えられる.

  • 菅沼 成正, 中森 義輝
    2003 年 13 巻 1 号 p. 32-43
    発行日: 2003/06/25
    公開日: 2020/11/02
    ジャーナル フリー

    資源環境問題に対する従来の社会心理学的アプローチにおいては,アンケート調査やアクション・プログラムなどに基づいて,人々の環境行動モデルおよび環境配慮行動へと導くモデルが提唱されている.しかし,環境問題においては状況依存性指向が強いため,環境配慮行動を促進する仮説モデルの再現性,一般性を検証することは困難である.本研究ではこの点に着目し,社会シミュレーション技法を用いて従来のアプローチでは困難とされている仮説モデルの有効性検証を試みる.

    仮説モデルの構築において,本研究はLatanéらの社会的インパクトモデルを基礎にしている.Latanéらの研究と異なる点は,社会的インパクトモデルを行動評価アプローチモデルと置き換え,それと環境認知モデルを組み合わせた新たな環境アプローチモデルを提案している点である.また,ファジィ集合論を社会的インパクトモデルヘ取り入れ,行動評価アプローチモデルとの比較を行っている.その結果,環境認知アプローチは行動評価アプローチと比べ,少数派の抑制効果だけでなく,少数派のクラスタ形成を抑制するという結果を得ている.

依頼論文
  • 三浦 麻子
    2003 年 13 巻 1 号 p. 44-55
    発行日: 2003/06/25
    公開日: 2020/11/02
    ジャーナル フリー

    情報技術の発展により,近年急速にその利用者を増やしているコンピュータを介したコミュニケーション(Computer-Mediated Communication; CMC)は,人間のコミュニケーション形態はもちろんのこと,社会生活にも大きくダイナミックな変化をもたらしている.本論文では,まずこのCMCの持つコミュニケーション特徴について,時間・空間の非共有や匿名可能など対面コミュニケーションとの比較の文脈で論じてから,CMCのさまざまな利用形態について,社会心理学における実証的研究の成果を引用しながら述べる.取り上げる利用形態は1)WWW掲示板 2)電子ブレーンストーミング 3)nRPG(ネットワークロールプレイングゲーム)であり,いずれも何らかの形で複数の個人が仮想空間に集ってコミュニケーションを行うという形のCMCである.最後に,これらの研究を通じて現在明らかにされているさまざまな特徴を踏まえながら,CMCを「特別で新しい」のではなく,「主要な」コミュニケーション形態としてとらえ,より一般性の高い知見を追究することの必要性が議論される.

  • 坂元 章
    2003 年 13 巻 1 号 p. 56-67
    発行日: 2003/06/25
    公開日: 2020/11/02
    ジャーナル フリー

    本論文では,日本において見られてきた,暴力性に関するテレビゲーム悪影響論と,それに対する社会心理学的研究の内容と経緯が解説された.テレビゲームの悪影響論は,5年程度のサイクルで盛んになっており,これは,テレビゲーム業界,司法,行政に対して大きな社会的影響力を持ってきたことか紹介された.また,悪影響論の中でも,暴力に関するものはもっとも盛んに出されてきたが,それについての研究は1997年までは少なく,それ以降になって急増したことが指摘された.そうした研究では,暴力的テレビゲーム使用が人々の暴力性を高めるとする結果がしばしば得られており,現在では,テレビゲームの悪影響を支持する方向に研究者の意見が傾いているとされた.また,最近になって,影響がよく検出される傾向があり,これは,ゲームソフトの現実性が高まったために,テレビゲーム使用の影響力が強まっていることを反映しているのではないかと述べられた.

    本論文ではまた,将来における悪影響論や研究の状況や課題についても論じられた.今後は,研究が量的にも質的にも充実し,テレビゲームと暴力の問題に関する多くの問いに答えられることが必要であること,そのためには,異なる分野を含む,研究者や実務者などの間の連携が重要であることが指摘された.最後に,こうした研究において日本が一定の役割を果たすべきであることが強調された.

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