地球環境の保全という共通利害へのコミットメントを人々に促すには,地球共同体としての全体世界への帰属意識を育てることが必要である.しかし現状では,貧富の格差が,世界への帰属意識を阻害し,地球保全という共通課題への取り組みを複雑にしている.これまでの研究では,先進および途上地域の世界への帰属意識の持ち方はよくわかっていない.本研究では,先進および途上地域のメンバーが,共通目標に貢献することを通じて,世界への帰属意識を高めていくのかを,仮想世界ゲーム(広瀬,1997)において検討した.
ゲーム実施の結果,先進および途上地域は,環境問題という共通の危機に直面し,対等な立場で協力することによって,世界への帰属意識を高めうることが示されたまた同時に地域への帰属意識も問題発生後に高まっていた.これについて,問題が解決しても資源格差は解消しないため,地域という境界はなくならずに,地域への帰属意識も持ち続けたと考察した.
寄金行動と帰属意識の関連については,途上地域では,寄金行動と世界への帰属意識との直接的な関連が見られたのに対し,先進地域では,寄金行動と地域への帰属意識との直接的な関連が見られた.途上地域の人は,寄金という協力をあまりにしていないにもかかわらず,世界への帰属意識を高めていく一方で,先進地域の人は,多くの寄金を負担するという協力によって,世界での優越感を強めていく可能性について言及した.
抄録全体を表示