2003 年 13 巻 2 号 p. 159-168
ダイナミック社会的インパクト理論(DSIT)は,個人間の独立した相互作用の結果,集団レベルの自己組織化である空間的収束が生じることを予測する.DSITにおいてモデルに組み込まれてきた個人間の距離の分布の偏りがDSITの予測する現象にどのような影響を与えるかを検討するため,本研究では格子状のセルラーオートマタではなく,エージェントを自由に場に配置するマルチエージェントの形式を用いてDSITのシミュレーションを構築した.また,DSITに対する批判を踏まえ,態度を決定する関数として.2値化関数だけでなく連続かつ非線形な関数も同時に検討した.シミュレーションの結果は,距離の分布の偏りと意見の非線形性が同時に適用されると,合併が生じて空間的収束が起こりつつも多様性が頑健に維持され,完全な均ー化が生じないことを示した.日常生活における相互作用における距離の規範的役割と態度の非線形性の実証的検証が今後の重要な課題である.