2018 年 27 巻 2 号 p. 61-73
本研究では大学生を対象としたソーシャルスキル教育のためのシミュレーション教材の試作版を作成した.教材は講義と連動して講義の復習や,講義中の演習等で使用することを想定した.ソーシャルスキル教育の般化と効果の維持の問題を克服するために対人葛藤場面を問題解決場面とみなし,松田(2016a)の問題解決の縦糸・横糸モデルに即してソーシャルスキル教育で育成したい資質・能力をモデル化したうえで教材を作成した.教材の効果検討と改善のための情報を得るために,試作した教材を理工系の大学生22名に実施した.学生が教材使用前に発想した案と教材使用時に発想した案を比較したところ,教材使用前に比べて教材使用時のほうが対人交渉方略のレベルが高い案となっていた.ただし,これは講義と教材利用を組み合わせた効果であり,教材の独自の効果を検討することができていないことや,対象が理工系大学生に限定されることなどが本研究の限界点としてあげられ,今後の課題が示された.また,学生の自由記述やアンケートの結果および活動の記録より,教材のインターフェイス改善とフィードバックおよび協働学習機能の追加が今後の改良点として示された.