2022 年 31 巻 2 号 p. 130-142
本研究は,NIMBYとしての高レベル放射性廃棄物地層処分地選定問題を取り上げ,合意形成プロセスにおける無知のヴェールの有効性を探索した.本研究は,誰もが当事者となり得るということと,自分の利害関係について不明であるという無知のヴェールの二つの要素を決め方に適用し,NIMBYの合意形成促進における有効性を検討した.ゲーム構造として,プレーヤー全員が立地地域住民となり得るとし,そのうえで利害関係を知らずに価値基準を議論する役割のプレーヤーを設けた,「高レベル放射性廃棄物処分地選定合意形成ゲーム」を開発・実施した.ゲームでは利害の代弁者である地域の首長と,利害関係を知らない無知のヴェールに覆われた住民代表のプレーヤーが順番に価値基準を議論して決定する.その結果,無知のヴェールを適用した決め方は,公正と評価されていたが必ずしも受容にはつながらなかった.合意形成プロセスに無知のヴェールを組み込むことは有効だが,立地地域を絞り込む際は別の方法を組み合わせる必要性が示唆された.