2022 年 31 巻 2 号 p. 143-155
NIMBY構造を内包する忌避施設の立地をめぐっては,他のアクターよりも負担が集中する当事者の権利を重視すべきという判断がなされやすく,当事者の優位的正当化と定義される.しかし当事者の優位的正当化が自明視される場合,忌避施設の立地がなされず社会全体での共貧化や,あるいは忌避施設の問題に対する人々の関心の低下が生じる.本研究では,忌避施設としての地層処分場および保育園の立地を焦点とする「誰がなぜゲーム」 (WWG)を実施し,忌避施設が立地された場合に負担が集中する当事者と,利害が対立するもうひとつの当事者,つまり忌避施設が立地されなかった場合に負担が集中する当事者が併存する多極化構造を設定した.当事者が多極化した状況では,当事者の優位的正当化が抑制され,政府や行政の正当性に対する評価が向上した.2つのゲーム実施例をもとに,当事者に対する優位的正当化の発生と抑制の過程,およびWWGの展開可能性について考察した.